手術事例ブログ

2014年7月10日 木曜日

犬の小腸(十二指腸)にできた癌 調布市 府中市 三鷹市 武蔵野市 稲城市 動物病院

犬の小腸にできる腫瘍と言うと主なもので腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫などがあります。症状としては嘔吐、下痢、食欲不振などがみられます。
 小腸の腫瘍において、手術時に転移があるかないかで生存期間が大きくことなります。転移があった場合の生存期間は短くなります。小腸の中で発生部位として空腸が一番多く(小腸の中で空腸が断トツ長いので)、次に十二指腸、回腸となります。

今回の例は十二指腸にできた癌の例です。小腸の中で十二指腸の手術が一番厄介です。理由は十二指腸には胆嚢からつながる総胆管が接続していたり、膵臓からつながる膵管が接続していたり、触れると炎症を起こしやすい膵臓自体と隣り合っていたり、深い位置を走行していたりと考えるだけで頭が痛くなります。両手の指で持っているのが十二指腸で真ん中の部位が癌に侵されています。


腫瘍部分をガーゼで覆いながら、血管を止血し、分離していきます。ピンセットのしたに見えるのが膵臓です。膵臓を乱暴に扱うと術後に膵炎を起こしますので丁寧に行います。


腸間膜を分離したあとに切除する部位を腸鉗子で鉗圧します。総胆管や膵管の十二指腸への開口部を傷つけないように切除範囲を決めます。


腫瘍部位を切除したところです。空腸や回腸に比べ十二指腸の腫瘍はマージンを確保するのが難しい場所です。


腸管同士を縫い合わせているところです。


縫合を終えたところです


その後、転移が無いかどうかを調べるために近くのリンパ節を取ります。そして他の臓器に転移を疑う所見が無いかどうかを調べ、無ければ閉腹します。

切除した部位です。腸の内側から漿膜(腸の一番外側の膜)面にも腫瘍が浸潤してきているのがわかります。


内腔面をみると腫瘍部分が潰瘍を起こしています。粘膜が肥厚しているのもわかります。


病理検査では腺癌とのことでした。リンパ節への転移はみとめられませんでした。しかし漿膜を超えて外方に腫瘍がせり出しているとのことで腹腔内播種の可能性があったためその後、抗がん剤による治療を行いました。今現在は手術前より太り、元気に駆け回っています。

小腸の腺癌は転移がなければ、比較的長い生存期間が得られることが期待できます。ゆえに早期に発見し、早期に治療することが非常に重要です。




西調布犬猫クリニック

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2014年7月 7日 月曜日

瞼の腫瘍(マイボーム腺腫)の手術例 調布市 府中市 三鷹市 武蔵野市 稲城市 動物病院

目の角膜を覆っている涙が蒸発しにくくなるように(要は、目が乾きにくくなるよう)に眼の表面に対し油を分泌する分泌腺が瞼にあります。マイボーム腺といいます。マイボーム腺腫とはそれが腫瘍化したものです。小さな時は特に悪さはしませんが、大きくなると角膜を傷つけたり、表面が自壊し、出血や感染を起こします。人でも眼にゴミが入るとゴロゴロしてとても不愉快ですよね。マイボーム腺腫が角膜を擦るようになるとかなり不快感を感じるようになり床にこすりつけることがあります。


この13歳のワンちゃんは眼瞼の腫瘤が1年前から徐々に大きくなってきました。高齢という理由でこれまで治療はされていませんでした。当院に来院されたときにはしょっちゅう表面が自壊し出血を繰り返しているということでした。

確かに高齢ではありますが、血が眼の中に入りそれを気にして擦ったり、目やにが多かったりと生活の質が落ちていました。このままではいずれ角膜表面にびらんや潰瘍を起こす可能性ありますので手術にて切除することにしました。

上眼瞼と下眼瞼にひとつづつ大きなマイボーム腺腫がみられます。これは麻酔がすでにかかっているところです。眼のまわりは毛を刈っております。


下から見たところです


瞼を開いたところです。かなり深くまで腫瘍が入り込んでいます。


取り残すと再発する可能性がありますので、慎重に切開します。


切除したところです。


瞼の内側の粘膜を溶ける糸で縫い合わせます。


皮膚を縫合します。このとき瞼の端がズレないように丁寧に縫い合わせます。


同様に下眼瞼の腫瘤を切除します。手術部位周囲が赤くなっているのは局所麻酔を注入した際の内出血です。


切除した腫瘤です


手術後6ヶ月の外観です。向かって右側が手術をした方です。上眼瞼の腫瘤がかなり大きかったためやや反対側に比べ目が小さく見えます。




現在は、眼を気にすることは無く、快適に生活しているとのことです。飼い主様も大変満足されていました。



眼瞼の腫瘍は良性のマイボーム腺腫ばかりではありませんので注意が必要です。
このワンちゃんは眼瞼炎として治療したが反応が悪く組織生検を行ったところ肥満細胞腫グレード3という非常に悪性度の高い腫瘍であった例です。眼球摘出や骨を含め広範囲に切除しました。










眼瞼のマイボーム腺腫は小さければ、問題になることはありません。しかし大きくなると非常に厄介な腫瘍です。ある程度大きくなる場合には治療を考えた方がいいでしょう。また良性のマイボーム腺腫ではなく、他の悪性腫瘍の可能性もありますので注意が必要です。安易に経過を見ずに動物病院で診察を受けましょう。
 

西調布犬猫クリニック

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2014年5月26日 月曜日

犬猫のスネの骨の骨折 調布市 府中市 三鷹市 武蔵野市 稲城市 動物病院

犬猫のスネの骨(脛骨)の骨折は割と多く見られます。

折れている場所によって治療の仕方も変わってきます。

今回の例は犬の脛骨骨折で粉砕骨折です。
粉砕骨折は単純骨折よりも複雑になります。折れている場所は真ん中より少し上です。
このタイプの骨折は骨折片の完全な整復が不可能なため生物学的骨癒合が最適です。つまり骨折部位の骨片を一つ一つパズルを合わせるように治すよりも骨折部位はあまりいじらずに骨をまっすぐに支えることを目的に整復します。そうすることで複数に分かれた骨片が自然に寄り添って治癒します。
ちなみに脛骨上部にあるピンは膝蓋骨内方脱臼を整復した際のものです。
 

手術直後のレントゲン写真です。今回は髄内ピンとプレートにて整復しました。骨折部位の骨片にはなるべく触れないようにし血行を遮断しないようしました。そうすることでバラバラになった骨片の回復が早くなります。
 

手術後3ヶ月経過した時点でのレントゲン写真です。バラバラになっていた骨片がキレイに癒合しているのがわかります。歩行状態も骨折前とほぼ同じ状態になり、元気に走っています。手術後半年くらいでピンやプレートを取り出すことを考えます。しかし生活上支障がなければそのままにしておいても問題になることはほとんどありません。
     

半年経ったところでレントゲン検査にて骨密度が低いようにみえましたので、髄内ピンとプレートを取り除きました。
 



その他の例としてこれはまだ若い猫の脛骨の足首に近い部位(脛骨の下の部分)での単純骨折です。プレートのみで整復しました。
   

さらにもう1例あげると、若いプードルの脛骨の膝関節のすぐ下が骨折している例です(脛骨の上の部分)。単純骨折です。
ピンを二本いれて固定しました。






このように折れている場所や折れ方により治し方が違ってきます。それぞれの状況に応じて最良な方法を考えて手術を行います。






調布市、府中市、三鷹市周辺の方で犬猫の骨折でお困りの方は西調布犬猫クリニックまでご相談ください

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2014年4月21日 月曜日

猫 口腔内 扁平上皮癌 片側下顎骨切除 調布市 府中市 三鷹市 武蔵野市 稲城市 動物病院

猫ちゃんの口のなかにできる悪性腫瘍のなかで1番多いものは扁平上皮癌です。口のなかのどこにでもできます。一番厄介なのは舌の裏側にできるものや喉にできるものです。見つかりにくい上に治療が困難なことがほとんどです。歯肉(歯茎)にできることもあります。歯肉にできたものでモリモリと盛り上がって大きくなっているものに関しては手術やその後の補助治療によって良好な予後を得ることもあります(大きさやどのくらい進行しているかにもよりますが・・・)。潰瘍を形成し出血や化膿しているような場合は治療後の予後は悪い場合があります。いずれにしても早期発見が重要であり、気になることがあれば動物病院にご相談ください。

この猫ちゃんは2ヶ月前ぐらいから口を気にしているとのことで来院されました。
下あごの奥歯の歯茎が少し盛り上がっていて、充血しているのがわかります。
麻酔下でこの部位のレントゲン撮影と組織生検をおこないました。レントゲン写真では下顎骨が溶けていることが判明し、病理検査では扁平上皮癌であることがわかりました。
癌をこのままにしておくと、癌の増大の結果食べることができなくなること、腫瘍の表面の自壊感染、さらに骨が溶けていくことでの痛みの増大により死期を早めることになることを説明し手術により切除することにしました。扁平上皮癌は周囲組織への浸潤性が非常に強いので広範囲の切除が必要です。そこで片側の下顎をすべて切除することにしました。





手術時の写真です。黒い糸は組織生検時に縫ったものです。


可能な限り腫瘍を残さないように慎重に切開を進めます。


前後左右上下いずれの方向も腫瘍から最低1㎝のマージンを取るようにします。



片側の下顎を切除したところです。肉眼状は腫瘍をすべて切除できました。



下顎を切除した後の出血を慎重に止血します。


術後の舌の動きなどを考え口のなかを縫合します。


下顎が無いことで舌が横に垂れるのを防ぐため、唇の端の部分を縫い縮めた所です。
これにより舌が垂れにくくなります。



手術後3週間経ったときの写真です。抜歯は済んでいます。手術後2週間ぐらいはヨダレで口のまわりが汚れます。エリザベスカラーをとって、顎周囲をきれいに拭いたところです。


残った方の下あごは少し真ん中にズレますが、見た目はそんなにわかりません。



手術後6ヶ月時の写真です。ヨダレで少し汚れてしまうとのことですが見た目はそんなに気にならないとのことです。

再発や転移も無く順調に経過しています



次の猫さんは1ヶ月ほど前から下あごが腫れてきたということで来院されました。前医では「抗生剤等の治療を行ったが効かないので腫瘍だと思う。もう何もできないので消炎剤で様子を見ましょう」と言われたとのことです。当院にはもうどうにもできないものなのかを聞きたいとのことで来院されました。当院では、まず何の腫瘍で、腫瘍はどこまで広がっているのかを精査しました。そして下顎リンパ節やその他の臓器への転移が見られず、病理検査では扁平上皮癌という結果でした。そこで飼い主様に治療法をいくつか提案し、それぞれのメリット、デメリットを説明しました。もちろんこのまま経過をみるのも一つの選択肢として提示しました。その中から飼い主様は外科的に切除することを選択されましたので手術を行いました。

向かって右側の下顎が盛り上がっています。触ると非常に大きく固い組織です。



最初の例とは違いあまりにも腫瘍が大きいためマージンを十分に取ることはできません。この場合、手術の目的は根治ではなく、あくまでも緩和治療です。


根治は難しいですが、再発を極力遅らせるためにできる限り腫瘍を取り除くことを考えます。


下顎の前歯を半分に割り、腫瘍の内側を分離していきます。


腫瘍が存在する下あご半分を切除したところです。腫瘍が巨大なのがわかります。


腫瘍を切除したあとの様子です。舌の付け根まで切開が及んでいます。


口腔粘膜と口唇粘膜を縫合したところです。



手術が終了したところです。この後は1週間程度は入院となり、その間は疼痛管理をしっかりと行います。この猫さんは性格的に入院中は自らゴハンを食べないことが予想されましたので頸部に食道瘻チューブを留置し、そこから流動食を給餌しました。これにより術後、食べないことで体力が低下するのを防ぐことができます。


術後の病理検査では、腫瘍は取りきれているが腫瘍周囲を覆っている正常組織の幅はわずか1ミリとのことでした。


退院後はすぐに自分の口から食餌を取り、術前からあったヨダレも止まり、非常に良好に経過しています。手術後の顔面の変化もなく飼い主様は非常に満足しておられました。

猫さんの口腔内にできる扁平上皮癌には今回ご紹介したような腫瘤(カタマリ)を形成するタイプと潰瘍(表面が崩れている)を形成するタイプがみられます。潰瘍形成型は予後は非常に悪いのに対し腫瘤形成型は手術で切除できれば、比較的良い予後が期待できます。ですので当院ではたとえ根治が難しいとされている扁平上皮癌であっても、タイプによって積極的に手術をおこなっております。


下顎を取るというのは大掛かりな手術であり、術後の状態等も含め可愛そうということで手術をあきらめる方もいらっしゃると思います。しかしながら癌を放っておいた場合どうなるかを考えていただくことが重要です。どんどん大きくなって、自壊し、化膿します。少しの口内炎でも痛いのに、その部位に歯があたり痛みは日に日にひどくなります。さらに骨が溶ける時の痛みも強く、ゴハンを食べることなんて到底できなくなります。さらに進むと外側にも張り出し常に出血が見られ血だらけになることもあります。当然内側に張り出すと、ものが飲み込めません。食べれないことと、感染、痛みなどで急激に衰弱していきます。術後数日の痛みと延々と続く痛み、どちらがつらいですか?安易に手術をしないという選択をする前にじっくり考えていただき、その結果として手術をしないという選択をしたならば尊重いたします。なにが一番いいのかをご家族の皆様とよく考えていただくのがいいと考えます。


ちなみに下の写真はすでに手術での切除が不可能な状態で来院された猫さんです。口内炎ということで治療を続けていたとのことです。なかなかよくならないとのことで当院に来院されましたが腫瘍は喉の奥まで浸潤しており手術は不可能と判断しました。





 

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2014年2月22日 土曜日

胃瘻チューブ 調布市 府中市 三鷹市 武蔵野市 稲城市 動物病院

今回は胃瘻チューブについて

胃瘻チューブについては人間では賛否両論です。最近ではなるべく口から食べる訓練をしたり、早期に胃瘻チューブから離脱するようになってきています。

当院での胃瘻チューブの考え方としては胃瘻チューブを設置すれば病気を克服し元気な状態に戻れる可能性が高いのであれば積極的に実施しています。胃瘻チューブの設置については9割は猫で実施しています。その理由は犬の場合、病気を治せば食べてくれるようになることがほとんどであるからです。猫では病気になると食欲がなくなり、その状態が続くと肝リピドーシスなどを併発しさらに回復を困難にします。さらに猫は重い病気になると餓死します。つまりまったく食べなくなります。その餓死を防ぎ栄養状態をいい状態で保ちつつ、病気を治療するために胃瘻チューブを設置します。

胃瘻チューブというと多くの方は「かわいそう」とか「チューブがお腹から出ているなんて」とか「やり方がわからない」等の理由で拒否感をもたれると思います。ですが実際はつけてみると意外と管理も楽だし、やり方も簡単だし、見た目も気にならないなどつけてよかったいう方がほとんどです。

胃瘻チューブを設置する猫ちゃんは口や喉、舌に腫瘍ができたりして食べることができないコ。重度の口内炎のコ。重度の膵炎や肝リピドーシスのコ、抗がん剤治療中で食欲が安定しないコ。腎不全で食事や飲水がままならないコなどです。


この猫ちゃんは重度の腎不全でした。しかし胃瘻チューブを設置することでみるみる元気になってふっくらとしています。胃瘻チューブから水分も補給できるため皮下点滴も必要ありません。お薬もチューブから投与できます。

お腹からチューブが出ているところです。月に1回程度周囲の毛を刈ります。出ているチューブは着ている服のポケットに丸めていれます。


胃瘻チューブ用の洋服もインターネットで探すと作ってくれるお店があります。かわいいです。


このネコちゃんは喉の扁平上皮癌で食べることができなくなり設置しました。


このコは食道裂口ヘルニアの手術時に腎不全もあったため設置しました。このコの場合は手術と同時に開腹下で設置しましたが、通常は開腹することはありませんので侵襲も最小限です。


このお洋服は飼い主様の手作りです。とっても似合っていますね。チューブはポケットにはいっています。


胃瘻チューブを設置した猫さん達はみんなチューブを許容し、自分で抜き取ったりすることはほとんどありません。1例でポケットから出ているチューブを噛んでしまったこと、もう1例でポケットから出てしまっていたチューブがテレビから飛び降りた際に引っ掛かってしまい抜けてしまったことがありましたがそれ以外の事故はいまのところありません。


胃瘻チューブは皆さんが思っているほど大変なものではありません。まったく食べない状況であとはただ見ていくしかないという状況の猫が胃瘻チューブを設置することで元気になっていく姿を何度も見てきました。この写真を見て胃瘻チューブへの理解が広がれば幸いです。

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