手術事例ブログ

2015年7月27日 月曜日

股関節脱臼 手術 調布 府中 三鷹 武蔵野 狛江 動物病院

 イヌの股関節脱臼はそんなに多い疾患ではありませんが、たまにみられます。
高いところから落ちたり、びっくりして走って転んだり、段差で足を踏み外したりすることで起こります。
症状は脱臼の仕方にもよりますが、イヌの場合、だいたい前背側に脱臼しますので足をつかずに少し浮かしたような格好をします。つま先は体の内側に向いています。後からよ〜く見ると足の長さが違うように見えたりします。まあ足がぜんぜん着かなければ動物病院でレントゲン写真を撮ってもらうとすぐにわかります。
 治療は手術せずに麻酔下で足を引っ張って脱臼を整復する方法と手術で整復する方法があります。まずは手術せずに整復して様子を見ることが多いと思います。整復後は足を曲げた状態でテープで体に固定します。2週間ほど固定した状態が維持できればうまく治る可能性があります。しかしそれで再脱臼してしまう場合には手術で整復します。手術後もテープでの固定が必要です。
 手術はいろいろな方法があり、手術成績はどれもほとんど同じと言われています。獣医師が脱臼の状態をみて最良な方法や慣れている方法を選択します。ちなみに手術をしても再脱臼したり、もともと大腿骨頭が嵌る寛骨臼が浅く再脱臼する可能性が高い場合や手術をなるべく1回で済ませたい等の理由により大腿骨頭を切り取ってしまう大腿骨頭切除という方法をとることもあります。猫の場合、用手や手術で整復した後のテープでの固定を許容できないことが多いので、大腿骨頭切除を行うことが多いと思います。猫は大腿骨頭が無くても普通に歩いてくれることがほとんどです。
 当院ではイヌの場合、まずは用手で脱臼を整復して、再脱臼するようなら手術を行います。手術をした方が治る確率は高いので始めから手術を希望される場合には手術します。上記のような理由で骨頭切除が望ましい場合には飼い主様と相談した上で決定します。手術方法は自分が慣れている方法で行います。関節包の破れ方によって他の方法を考えることもありますがだいたい同じ方法で事足りています。
絵に書くとこんな感じです。

まず、破れた関節包を縫います。寛骨臼から剥がれるように破れている場合には縫い代が無いので、ネジを打ち込んでそこに糸をかけたりします。そしてつぎに腰の骨(腸骨)に穴を開け、さらに大腿骨にも穴をあけ、そこに糸を通して結びます。これにより股関節が開くのを制限できます。前背側脱臼は股関節が開く時に脱臼してしまいますので、この動きを制限することがとてもだいじなんです。のちにこの糸は揺るんでしまいますが、それまでに関節包がしっかりくっついてくれれば問題ないのです。

実際の写真です。
麻酔下で用手整復しております。足をひっぱって骨頭を寛骨臼に嵌めます。


その後、テープで固定します。足先を内側に向け股関節が外に開かないようにします。


このように、用手整復をおこないましたが、再脱臼してしまいましたので手術にて整復を行いました。
脱臼した大腿骨頭が見えております。


脱臼の状態と破れた関節包の状態を観察し、整復方法を決定します。


関節包を縫合しているところです。





関節包の縫合が終わりましたら、次に腸骨に穴を開け太めの糸を通します。


次に、大腿骨にも穴を開け、糸を通します。


腸骨と大腿骨に通した糸を結びます。これで手術は終了です。この後は再度テープでの固定を行い2週後に固定を外し、抜糸を行いました。


術後一ヶ月経った時の様子です。はしゃぎすぎて心配になるくらいでした。


術後2ヶ月時にトリミングで来院された時の状態です。歩様も問題なく、筋肉量も左右差が無くなり、もう普通に生活しています。


股関節脱臼は治療法が1つではないので、飼い主様はどのような治療を行うのか迷ってしまうことが多いと思われます。麻酔回数をなるべく少なくしたい場合には始めから手術を選択するのがいいと思いますし、侵襲度の低い治療からという場合にはまずは用手にて整復するのがいいと思います。手術方法も本当にいろいろな方法がありますので、獣医師とよくお話の上検討していただくのがよいと思います。

投稿者 西調布犬猫クリニック | 記事URL

2015年7月17日 金曜日

会陰尿道瘻 ネコ 尿石 尿道閉塞 動物病院 調布 府中 三鷹 狛江 武蔵野

ネコの尿道閉塞で最も多い原因は結石です。最近は尿石症に対する療法食が各メーカーから出されております。それをネコに食べてもらうことで、多くの尿石症に苦しむ猫達がゴハンだけで結石症を良好に管理することができます。ですから昔に比べて尿道結石に対する手術を行うことはかなり減ってきていると思います。しかし尿石症用のゴハンを食べていても、結石ができてしまう猫さんが少なからず存在します。そんな猫さんはどのメーカーの療法食に変えても結石ができてしまいます。そして尿道閉塞を繰り返します。当院に手術を目的に来院される猫さん達も療法食、サプリメント、内科治療をしていたが効果が乏しく、尿道閉塞を繰り返し、閉塞を解除するということを繰り返しています。そしてそういった治療を長期的に継続した結果、腎臓が障害され慢性腎不全を患っていることが多くあります。療法食でなかなかうまくコントロールできないときには、安易にそういった治療を継続することは止めましょう。尿道閉塞を繰り返すことで腎臓がダメージを受け、取り返しのつかないことになります。内科治療でうまく行かない時には外科的に尿道を太くする治療を行うことで尿道閉塞を回避することができます。これにより結石が尿道に詰まる可能性はほぼ無くなります。


こちらの猫さんも数年間、療法食を食べながら、年に数回の尿道閉塞を繰り返していました。膀胱内には砂粒状の結石がたくさんありました。かかりつけの獣医さんに当院を紹介して頂き、当院で手術を行いました。




当院では陰茎の包皮を温存したまま、尿道粘膜と包皮粘膜を縫い合わせる方法を行っております。こうすることで手術後の狭窄が起こりにくく、しかも見た目にも手術前とほぼ変わりありませんので大変喜ばれます。デメリットとしては通常の皮膚に直接尿道粘膜を縫い付ける方法に比べて難易度が高いということです。



尿道にカテーテルを入れたところです。尿道口は長年閉塞を繰り返していたことで慢性的に炎症が起きて狭窄していました。1.5ミリメートル程度のカテーテルも入りませんでしたので、尿道の途中を切開してそのカテーテルをいれています。


尿道を切り開いたところです。従来のウイルソン法は切り開いた尿道の真ん中にみえる白い尿道粘膜を皮膚に直接縫合していきます。その方法もとてもいい方法ですが皮膚に直接縫うので尿が皮膚について炎症を起こしやすく、それにより狭窄してしまう恐れがあります。


当院では、尿道粘膜と包皮粘膜をあわせる方法を採用しています。尿道粘膜と皮膚の間に包皮粘膜があることで皮膚が直接尿に接触することを避けられます。


手術が終了したところです。入っているのは3ミリメートルくらいあるカテーテルです。このくらい尿道が太くなると、砂粒状の結石等は簡単に通過していきますので閉塞することはまずありません。



抜糸時の様子です。手術から2週間後です。見た目は手術前とそんなにかわりません。手術後も太いおしっこを勢いよくしているとのことで飼い主様も大変喜んでおられました。



尿石症は基本的に内科治療でうまくコントロールできる可能性が高い疾患です。しかしだからといって100%ではありません。中にはどんな内科療法にも反応しないものもあるのです。そういった場合には腎臓がダメになってしまう前に外科的な治療を考えましょう。当院に手術を目的に来院された猫さんで腎臓がほぼダメになってしまっていることがあります。ある猫さんは尿道結石により慢性腎障害を患い、さらに陰茎を気にして舐めてしまうのでエリザベスカラーを常にしていました。そして尿漏れもあるので寝る時はケージに寝かせているとのことでした。飼い主様は腎臓が悪くそんなに先が長くないことはわかっているが最後に少しだけでも一緒に布団で寝たいということで手術を希望されました。結果的に手術後約2ヶ月で腎不全で亡くなってしまいましたが飼い主様は2ヶ月の間一緒に布団で寝れたことに大変満足されていました。よかったと思いますが、しかし私としてはもう少し早く来ていただければなと・・・。

投稿者 西調布犬猫クリニック | 記事URL

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