2018年8月 1日 水曜日

会陰ヘルニア 7 犬 手術 調布市 府中市 三鷹市 武蔵野市 

最近、当院で行なっている会陰ヘルニアの手術の紹介です。

会陰ヘルニアには様々な手術法が存在し、それぞれ手術する獣医師がどういう方法で行うかを選択します。

ただし、どんな方法でもデメリットが存在します。

理想的には人工的な材料(メッシュやシリコン性のプレートなど)を使わずに自分の体の中の組織だけでヘルニア孔を塞げればいいのですが、ヘルニア周囲の筋肉はたいていの場合、かなり萎縮しており、強度はかなり弱くなります。さらにその周囲の筋肉を使う方法もありますが、皮膚を切開する範囲や体に対する侵襲がかなり大きくなります。そしてそれらの代わりに強度の強い人工材料を使う方法も多数考案されてきました。ただし、人工材料を使った際には、体の異物に対する炎症反応が強く出たり、感染を起こしやすくなったりと、やはりデメリットが存在します。

当院ではこれまで主に、睾丸を包む丈夫な鞘膜を利用してヘルニア孔を塞ぐ方法を行なっておりました。しかし手術手技が煩雑で時間がかかるというデメリットがありました。さらに強度もメッシュに比べると弱く、心許ないということがありました。そこで最近当院ではポリプロピレンメッシュを使った方法を採用しています。このポリプロピレンメッシュは人間の鼠径ヘルニアの手術にも使われている素材で、組織反応性が非常に低く、炎症を起こしにくいという体の中に残す素材としては最適なものです。

当院での手術例です。

ダックスフントちゃんの例です。直腸の拡張、蛇行があり、便の貯留によりかなり腫脹していますが、
自力での排便は可能ではありますが定期的な便の書き出しが必要な状況です。排尿は可能です。
レントゲン検査、超音波検査などで腹腔内の臓器の位置を
評価し、重症度をみましたが開腹下での直腸固定、前立腺・膀胱固定などの処置は必要ないと判断しました。


右側はかなり腫脹しています。


左側は特に問題ありません。左側は手術の必要はないと判断しました。


肛門の右側の皮膚を切開します。仰向けになっているので、左右反対になっています。


中には液体が貯留しています。


液体を吸引したのち、内部の構造を確認します。


組織反応性の少ないポリプロピレンの糸を仙結節靭帯にかけているところです。
近くに坐骨神経という大事な神経がありますので、確実に肉眼で確認しながら行います。


仙結節靭帯、肛門挙筋、尾骨筋、内閉鎖筋、肛門括約筋に確実に糸を通し、メッシュに縫合します。


皮膚を縫合し終えたところです。その後、去勢手術を行い終了としました。


術後2週で抜糸を行いました。腫脹は改善し、排便排尿機能も全く問題ありません。



当院での会陰ヘルニアの手術料金は入院費なども含めおおよそ20万〜35万(税抜)です。
ちなみに今回の例は22万円ほどかかっております。



会陰ヘルニアは高齢で患うことが多いのですが、治療は外科手術が最適です。高齢だからという理由で
手術を見合わせる飼い主様もいらっしゃいます。しかし内科的な方法ではいずれ限界がきます。
会陰ヘルニアと診断された場合には早めに手術されることをオススメいたします。
下の写真は数ヶ月前に来院されたワンちゃんの例ですが、来院されたときにはすでに瀕死の状態でした。
1年以上前に会陰ヘルニアと診断され、その後、11歳なので手術はせずに内科的に便をゆるくするお薬を飲んだり、便を指で掻き出したりして
凌いでいたそうです。1週前より全く排便できなくなり、かなり苦しんでいたとのことです。
来院時には直腸が反転し、肛門から飛び出しており、鬱血がひどく直腸を戻そうにも全く戻らない状況でした。
この時点で緊急手術をご提案いたしましたが、患者の状態が著しく悪い状況を考慮し、安楽死を選択されました。
飼い主様は最後にこんなに苦しい思いをさせてしまったとひどく後悔されておりました。



投稿者 西調布犬猫クリニック

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