手術事例ブログ

2015年12月 7日 月曜日

犬の甲状腺癌 動物病院 調布 府中 三鷹 武蔵野 狛江 稲城

犬の甲状腺にできる腫瘍の多くは悪性でその性格も非常に悪いとされています。性格が悪いというのは局所浸潤性が強く転移もしやすいということです。転移している確率はシコリがあるというのがわかって病院につれていった時点で半分くらいが転移していると言われています。大きさによっても転移の可能性が増加します。体積が20㎤より小さければ転移率は14%、20〜100㎤なら74%、それ以上なら100%と言われています・・・20㎤って・・・だいたい一辺が2.7センチのサイコロだから・・・え〜と〜・・・
まあ直径3㎝くらいのシコリより大きければ転移率がぐんと上がるということです。

ほかにも触った時に動かしてみて、グリグリ動くか、がっちりくっついていて動かないかによっても生存期間が変わってきます。動く場合には平均生存期間が3年、動かない場合には1年以下とされています。

なりやすい犬種としては日本ではビーグルが多いですね。ほかにシェルティやゴールデン、ハスキーなども多いようです。

治療の第一選択肢は外科的に甲状腺腫瘍を切除することです。しかし周囲組織への浸潤が強くみられ完全切除が困難であった場合、もしくは食道や気管などを強く巻き込み切除が不可能な場合には放射線治療を行います。さらに転移性の強い癌なので補助的に抗がん剤による全身治療が重要になります。


今回ご紹介する手術は、甲状腺癌で周囲組織への固着がなく、わかりやすいものをおみせします。

仰向けの状態で右側が頭側、左がお尻の方向です。毛を刈ってある喉の脇にポコッとふくれている部位が見えますね。


喉から気管の上をまっすぐ切開して、さらに頸部筋群を切開します。


気管の右側(写真では気管の上方)に腫瘍がみえます。


慎重に甲状腺腫瘍の周囲を確認し周囲組織との位置関係や固着がないかを確認します。この位置には
重要な頸動脈、頸静脈、気管、神経(迷走神経、半回神経)、食道が存在しますのでできるかぎりそれらを保護しながら腫瘍を切除します。


ご覧のように甲状腺はたくさんの血管と直結しています。ホルモンを産生しそれを全身に送る仕事をしているためです。さらに甲状腺の腫瘍が大きくなると血管も太くなり数も増えていきます。
これらの血管を丁寧に結紮し、切り離していきます。ひとたび出血すれば周囲が真っ赤に染まり、手術が難しくなります。


今回の例では周囲の癒着もなく、比較的短時間で切除することができました。


腫瘍を切除したところです。キレイにとることができました。


腫瘍を切除した後に、血管や神経などに重大な損傷が無いかを確認します。


筋肉を縫合します。


皮下組織、皮膚を縫合し手術を終えます。

病理検査の結果は甲状腺癌でした。腫瘍はすべて取りきれているという判断でした。
今回の例は周囲への固着などが無く、短時間で終わらせることができました。しかし進行した例では癒着が酷かったり、血管の中に腫瘍が入り込んでいたりすることが多々あり、手術は難航します。すべての腫瘍に言えることですが小さなうちに見つけて、取るということが良い予後につながるということです。
日頃から首まわりをよく触り、シコリを見つけた際にはすぐに動物病院で診てもらいましょう。

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2015年7月27日 月曜日

股関節脱臼 手術 調布 府中 三鷹 武蔵野 狛江 動物病院

 イヌの股関節脱臼はそんなに多い疾患ではありませんが、たまにみられます。
高いところから落ちたり、びっくりして走って転んだり、段差で足を踏み外したりすることで起こります。
症状は脱臼の仕方にもよりますが、イヌの場合、だいたい前背側に脱臼しますので足をつかずに少し浮かしたような格好をします。つま先は体の内側に向いています。後からよ〜く見ると足の長さが違うように見えたりします。まあ足がぜんぜん着かなければ動物病院でレントゲン写真を撮ってもらうとすぐにわかります。
 治療は手術せずに麻酔下で足を引っ張って脱臼を整復する方法と手術で整復する方法があります。まずは手術せずに整復して様子を見ることが多いと思います。整復後は足を曲げた状態でテープで体に固定します。2週間ほど固定した状態が維持できればうまく治る可能性があります。しかしそれで再脱臼してしまう場合には手術で整復します。手術後もテープでの固定が必要です。
 手術はいろいろな方法があり、手術成績はどれもほとんど同じと言われています。獣医師が脱臼の状態をみて最良な方法や慣れている方法を選択します。ちなみに手術をしても再脱臼したり、もともと大腿骨頭が嵌る寛骨臼が浅く再脱臼する可能性が高い場合や手術をなるべく1回で済ませたい等の理由により大腿骨頭を切り取ってしまう大腿骨頭切除という方法をとることもあります。猫の場合、用手や手術で整復した後のテープでの固定を許容できないことが多いので、大腿骨頭切除を行うことが多いと思います。猫は大腿骨頭が無くても普通に歩いてくれることがほとんどです。
 当院ではイヌの場合、まずは用手で脱臼を整復して、再脱臼するようなら手術を行います。手術をした方が治る確率は高いので始めから手術を希望される場合には手術します。上記のような理由で骨頭切除が望ましい場合には飼い主様と相談した上で決定します。手術方法は自分が慣れている方法で行います。関節包の破れ方によって他の方法を考えることもありますがだいたい同じ方法で事足りています。
絵に書くとこんな感じです。

まず、破れた関節包を縫います。寛骨臼から剥がれるように破れている場合には縫い代が無いので、ネジを打ち込んでそこに糸をかけたりします。そしてつぎに腰の骨(腸骨)に穴を開け、さらに大腿骨にも穴をあけ、そこに糸を通して結びます。これにより股関節が開くのを制限できます。前背側脱臼は股関節が開く時に脱臼してしまいますので、この動きを制限することがとてもだいじなんです。のちにこの糸は揺るんでしまいますが、それまでに関節包がしっかりくっついてくれれば問題ないのです。

実際の写真です。
麻酔下で用手整復しております。足をひっぱって骨頭を寛骨臼に嵌めます。


その後、テープで固定します。足先を内側に向け股関節が外に開かないようにします。


このように、用手整復をおこないましたが、再脱臼してしまいましたので手術にて整復を行いました。
脱臼した大腿骨頭が見えております。


脱臼の状態と破れた関節包の状態を観察し、整復方法を決定します。


関節包を縫合しているところです。





関節包の縫合が終わりましたら、次に腸骨に穴を開け太めの糸を通します。


次に、大腿骨にも穴を開け、糸を通します。


腸骨と大腿骨に通した糸を結びます。これで手術は終了です。この後は再度テープでの固定を行い2週後に固定を外し、抜糸を行いました。


術後一ヶ月経った時の様子です。はしゃぎすぎて心配になるくらいでした。


術後2ヶ月時にトリミングで来院された時の状態です。歩様も問題なく、筋肉量も左右差が無くなり、もう普通に生活しています。


股関節脱臼は治療法が1つではないので、飼い主様はどのような治療を行うのか迷ってしまうことが多いと思われます。麻酔回数をなるべく少なくしたい場合には始めから手術を選択するのがいいと思いますし、侵襲度の低い治療からという場合にはまずは用手にて整復するのがいいと思います。手術方法も本当にいろいろな方法がありますので、獣医師とよくお話の上検討していただくのがよいと思います。

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2015年7月17日 金曜日

会陰尿道瘻 ネコ 尿石 尿道閉塞 動物病院 調布 府中 三鷹 狛江 武蔵野

ネコの尿道閉塞で最も多い原因は結石です。最近は尿石症に対する療法食が各メーカーから出されております。それをネコに食べてもらうことで、多くの尿石症に苦しむ猫達がゴハンだけで結石症を良好に管理することができます。ですから昔に比べて尿道結石に対する手術を行うことはかなり減ってきていると思います。しかし尿石症用のゴハンを食べていても、結石ができてしまう猫さんが少なからず存在します。そんな猫さんはどのメーカーの療法食に変えても結石ができてしまいます。そして尿道閉塞を繰り返します。当院に手術を目的に来院される猫さん達も療法食、サプリメント、内科治療をしていたが効果が乏しく、尿道閉塞を繰り返し、閉塞を解除するということを繰り返しています。そしてそういった治療を長期的に継続した結果、腎臓が障害され慢性腎不全を患っていることが多くあります。療法食でなかなかうまくコントロールできないときには、安易にそういった治療を継続することは止めましょう。尿道閉塞を繰り返すことで腎臓がダメージを受け、取り返しのつかないことになります。内科治療でうまく行かない時には外科的に尿道を太くする治療を行うことで尿道閉塞を回避することができます。これにより結石が尿道に詰まる可能性はほぼ無くなります。


こちらの猫さんも数年間、療法食を食べながら、年に数回の尿道閉塞を繰り返していました。膀胱内には砂粒状の結石がたくさんありました。かかりつけの獣医さんに当院を紹介して頂き、当院で手術を行いました。




当院では陰茎の包皮を温存したまま、尿道粘膜と包皮粘膜を縫い合わせる方法を行っております。こうすることで手術後の狭窄が起こりにくく、しかも見た目にも手術前とほぼ変わりありませんので大変喜ばれます。デメリットとしては通常の皮膚に直接尿道粘膜を縫い付ける方法に比べて難易度が高いということです。



尿道にカテーテルを入れたところです。尿道口は長年閉塞を繰り返していたことで慢性的に炎症が起きて狭窄していました。1.5ミリメートル程度のカテーテルも入りませんでしたので、尿道の途中を切開してそのカテーテルをいれています。


尿道を切り開いたところです。従来のウイルソン法は切り開いた尿道の真ん中にみえる白い尿道粘膜を皮膚に直接縫合していきます。その方法もとてもいい方法ですが皮膚に直接縫うので尿が皮膚について炎症を起こしやすく、それにより狭窄してしまう恐れがあります。


当院では、尿道粘膜と包皮粘膜をあわせる方法を採用しています。尿道粘膜と皮膚の間に包皮粘膜があることで皮膚が直接尿に接触することを避けられます。


手術が終了したところです。入っているのは3ミリメートルくらいあるカテーテルです。このくらい尿道が太くなると、砂粒状の結石等は簡単に通過していきますので閉塞することはまずありません。



抜糸時の様子です。手術から2週間後です。見た目は手術前とそんなにかわりません。手術後も太いおしっこを勢いよくしているとのことで飼い主様も大変喜んでおられました。



尿石症は基本的に内科治療でうまくコントロールできる可能性が高い疾患です。しかしだからといって100%ではありません。中にはどんな内科療法にも反応しないものもあるのです。そういった場合には腎臓がダメになってしまう前に外科的な治療を考えましょう。当院に手術を目的に来院された猫さんで腎臓がほぼダメになってしまっていることがあります。ある猫さんは尿道結石により慢性腎障害を患い、さらに陰茎を気にして舐めてしまうのでエリザベスカラーを常にしていました。そして尿漏れもあるので寝る時はケージに寝かせているとのことでした。飼い主様は腎臓が悪くそんなに先が長くないことはわかっているが最後に少しだけでも一緒に布団で寝たいということで手術を希望されました。結果的に手術後約2ヶ月で腎不全で亡くなってしまいましたが飼い主様は2ヶ月の間一緒に布団で寝れたことに大変満足されていました。よかったと思いますが、しかし私としてはもう少し早く来ていただければなと・・・。

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2015年6月11日 木曜日

仔猫の尿道閉塞2 調布市 府中市 三鷹市 武蔵野市 稲城市 動物病院

仔猫の尿道閉塞は一般的ではありません。
尿道閉塞は一般的に成猫が患う病気で、原因は主に尿道結石やそれによる炎症産物が詰まって起こります。閉塞を繰り返すうちに尿道が狭窄してしまったり、内科的な治療を行っても結石形成を止められない場合には手術により尿道を広げる手術が必要になります。
今回の仔猫さんは親(野良猫さん)がいなくなってしまい、それを保護し育てていたのですが、仔猫同士がおっぱいと勘違いし陰茎を吸い続けたことにより、陰茎の先が欠損してしまったり、尿道の開口部が閉塞してしまったことによりおこりました。生後4ヶ月になるまでは細々となんとか排尿できていたり、尿が全然でない場合には細い針でお腹から膀胱に針を刺して抜いたりしていたのですが、飼い主様のなんとかできないかという強い要望により、手術にて尿道を形成することにしました。

雄の仔猫ですが、ご覧のように尿道開口部は肉眼的には確認できません。膀胱を強く圧迫すると、わずかに尿が滲み出てくるという状態です。この時点で腎臓の数値も上昇しており、尿毒症により嘔吐や食欲不振がみられました。
おしりの下にある盛り上がっている部位の頂点に本来、陰茎が存在し、それを包皮が包んでいます。


「子猫の尿道閉塞1」でご紹介したようになるべく単純な方法で形成できればと考え、手術を始めましたが、思うようにはいかないもので・・・

尿道開口部付近を円形に切り出し、陰茎を引き出して中の状況を確認しようと試みました。


しかし陰茎周囲は激しい炎症の名残で繊維化し包皮や陰茎を正しく認識することが困難でした。


陰茎の先端部の欠損や包皮との癒着。包皮自体も粘膜が欠損している部位があったり炎症を起こしている部位があり、陰茎を温存しての手術は不可能と考え陰茎先を切除し、尿道が太くなった部位での尿道粘膜を利用することにしました.つまり通常成猫で行われる会陰尿道瘻の手術に切り替えました。


陰茎に関しては利用は不可と考えましたが、包皮をなんとか残せないものかと考え、損傷している部位や炎症を起こしている部位を切り取り、包皮を筒状に形成し、それを尿道粘膜を縫合することにしました。


包皮を筒状にし、尿道粘膜と縫合しているところ。


そして筒状の包皮粘膜と皮膚を縫合し終了しました。


抜糸時の様子です。粘膜の赤みが消え、皮膚と粘膜の境目がわかりにくくなっていますが、非常に良好な状態です。この時点で排尿はまったく問題ありません。腎臓の数値も正常に戻っていました。


生後7ヶ月時点。手術から3ヶ月経過した時の様子です。去勢手術時の写真です。尿道の開口部の太さも十分で2㎜くらいのカテーテルも余裕で入ります。

膀胱を圧迫した時の様子です。かなり太い尿が出ているのがわかります(動画を静止画で撮ったので少しわかりにくくてすいません)。


現在も本人は何事も無かったように元気に暮らしています。めでたしめでたし。

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2015年6月11日 木曜日

子猫 尿道閉塞1 手術 調布市 府中市 三鷹市 武蔵野市 稲城市 動物病院

仔猫の尿道閉塞は一般的ではありません。
尿道閉塞は一般的に成猫が患う病気で、原因は主に尿道結石やそれによる炎症産物が詰まって起こります。閉塞を繰り返すうちに尿道が狭窄してしまったり、内科的な治療を行っても結石形成を止められない場合には手術により尿道を広げる手術が必要になります。
今回の仔猫さんは親(野良猫さん)がいなくなってしまい、それを保護し育てていたのですが、仔猫同士がおっぱいと勘違いし陰茎を吸い続けたことにより、陰茎の先が欠損してしまったり、尿道の開口部が閉塞してしまったことによりおこりました。生後4ヶ月になるまでは細々となんとか排尿できていたり、尿が全然でない場合には細い針でお腹から膀胱に針を刺して抜いたりしていたのですが、飼い主様のなんとかできないかという強い要望により、手術にて尿道を形成することにしました。

雄の仔猫ですが、ご覧のように陰茎の先が欠損してしまい、包皮もありません。尿道開口部は肉眼的には確認できません。膀胱を強く圧迫すると、わずかに尿が滲み出てくるという状態です。この時点で腎臓の数値も上昇しており、尿毒症により嘔吐や食欲不振がみられました。


仔猫なのでなんとか複雑な手術法ではなく、なるべく単純な方法で治せないものかと考えました。


まず、陰茎周囲の皮膚に切り込みを入れ、陰茎をわずかに引き出しました。このとき陰茎周囲にわずかに残る皮膚の無毛部を皮膚側にできる限り残すようにしました。


そして、尿道をなるべく中心部で切り開きました。

切り開いた部位の尿道粘膜とわずかに残した皮膚の無毛部を細い糸で縫合しました。


尿道の広さは十分で1ミリほどのカテーテルが余裕で入るくらいになりました。


手術後のようすです。


抜糸時の様子です。尿道粘膜と皮膚の無毛部がうまく癒合しました。この時点で、排尿に問題は無く、腎臓の数値も正常な値に戻りました。


生後7ヶ月時点、手術から3ヶ月後の状態です。去勢手術を行った際の状態です。尿道の開口部も十分な広さを確保しています。


膀胱を圧迫してみると十分な太さの尿が出ました。めでたしめでたし。
本人は今まで何事も無かったように元気に暮らしています。



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